今日は午前中会社で一仕事して、昼食もそこそこにビッグサイトへ。昨日に続き、「東京アニメフェア」会場で海外のお客様との打合せです。いろいろ大変だッ!(笑)

そんな移動の電車の中で、野沢尚著『破線のマリス』を読了。1997年の江戸川乱歩賞を獲り、野沢尚氏を"作家"として世に認めさせた作品です。この"原点的作品"をようやく読むに至りました。

本作のテーマはテレビが映し出す虚構と現実。何の変哲もない映像でも恣意的な使い方をすればいろいろな意味のある映像に見せることが出来る。そんなに恣意的な使われ方をしなかったとしても、例えばテレビのインタビュー取材を受けて1時間話して、実際にはそのうち30秒を編集して使われた場合、自分が話した意図とまったく違うコメントとして電波に乗ってしまったりする。

主人公は、ニュース映像の編集を担当する大変優秀な映像編集者。彼女が、手に入れた映像から"自身が読みとった真実"を効果的に視聴者に伝えるよう編集した"ニュース映像"によって、その映像に映った人物と、彼女自身の人生の歯車が狂い始める……。

テレビに映っている映像が、そのままの現実だとは限らない。そんな教訓はさまざまな場面で我々の前に提示されるが、普段どこまでそういった認識を持って自分たちが生活しているのかは、定かではない。

そんなテーマを、映像を編集する人間を中心において巧く描いた本作だが、物語を進行するために起こっている汚職絡みの殺人事件の方が途中から置き去りになっていくのは残念。『烈火の月』なんかを読むと、描きたいテーマも書き、事件や他のことがらにもしっかりと決着をつけることが出来る野沢尚氏だが、本作を書いた時点ではそこまで至らなかったのかな。

コメント